利益相反

利益相反に関する指針

序 文

日本小児救急医学会は,小児科医,小児外科医,集中治療医,成人領域救急医のみならず関連の各診療科医師,地域医療を担う医師,看護師,救急救命士が集う学際的学会であり,小児救急医学と小児救急医療の進歩,発展,普及に貢献している。

学術集会や学会誌などで発表される研究においては,新規の医薬品や医療機器,技術を用いた臨床研究も多く,産学連携による研究や開発が行われる場合が少なくない。このような産学連携による臨床研究は医学の進歩のために必要ではあるが,成果の社会への還元(公的利益)だけではなく,金銭,地位,利権など(私的利益)が発生する場合があり,これら2つの利益が研究者個人の中に生じる利益相反(conflict of interest:COI)と呼ばれる状態が発生することがある。このような利益相反と呼ばれる状況は,本学会の社会的信頼を損ねるだけでなく,産学連携活動自体が阻害されるおそれがある。

Ⅰ. 指針策定の目的

本学会は,その活動において高度の社会的責任と倫理性が求められている。日本小児救急医学会会員等が公正かつ効率的に責務に専念でき,社会連携活動が円滑に推進される環境を整備することを目的として利益相反に関する指針を策定した。本指針の目的は,本学会員に対して利益相反についての基本的な考えを示し,自己申告による利益相反状態の適切な開示を促すことである。

Ⅱ. 利益相反の回避と本指針の遵守

1)利益相反の回避

本学会が関与するすべての学術活動は,純粋に医学的な判断および公共の利益に基づいて行われるべきであり、資金提供者・企業の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約書を締結してはならない。本学会員は利益相反について十分に理解し,疑義が生じないよう努めなくてはならない。

2)本指針の遵守

日本小児救急医学会が関わるすべての事業における活動に対して,本指針を適用する。特に,本学会の学術集会,講演会,セミナー等の演者と本学会の学会誌,刊行物の著者には本指針の遵守が求められる。学術集会での教育的講演や市民に対して公開講座などを行う場合は,その社会的影響が大きいことから演者には特段の指針遵守の義務がある。

Ⅲ. 利益相反開示の対象者

利益相反状態が生じる可能性がある以下の対象者に本指針が適用される。

1)
学術集会における発表の発表者(共同発表者を含む)
2)
学会誌,刊行物における論文の執筆者(共同執筆者を含む)
3)
理事長,副理事長,理事,監事,学術集会会長,次期学術集会会長,各種委員会の委員長,編集委員,COI委員,ガイドライン作成委員
4)
編集委員会、利益相反委員会、ガイドライン作成委員会、医療安全・倫理委員会、薬事委員会、社会保険委員会の委員
5)
事務局職員
6)
本学会への倫理審査の申請者
7)
その他、利益相反委員会委員長が必要と定めた者

Ⅳ. 開示・公開すべき事項

対象者は利益相反の状況を所定の様式に従い開示する義務を負うものとする。開示の対象は本人とその配偶者,一親等以内の親族,または収入,財産を共有する者とする。具体的な開示の基準,公開方法は運用規則に定める。

Ⅴ. 実施方法

1)学術集会での発表

本学会の学術集会での発表に際しては,発表者のみならず共同発表者全員が演題申し込みと同時に利益相反申告書を学術集会会長に提出するものとする。教育講演,シンポジウム,セミナー等の発表者が非会員であった場合も利益相反申告書の提出を求めることとする。利益相反申告書に疑義があった場合,学術集会会長はその旨を理事会に報告する。

2)学会誌等での発表

本学会の学会誌や刊行物に論文等を発表する場合は,投稿時に執筆者のみならず共同執筆者全員が利益相反申告書を編集委員長に提出するものとする。執筆者が非会員であった場合も利益相反申告書の提出を求めることとする。利益相反申告書に疑義があった場合,編集委員長はその旨を理事会に報告する。

3)学会役員・委員への就任

理事長,副理事長,理事,監事,学術集会会長,次期学術集会会長,各種委員会の委員長,そして、特定委員会(編集委員会、利益相反委員会、ガイドライン作成委員会、医療安全・倫理委員会、薬事委員会、社会保険委員会)の委員は,就任時および年度毎に利益相反申告書を提出するものとする。

4)事務局職員への採用

本学会の事務局職員は採用時に利益相反申告書を提出するものとする。

5)本学会への倫理審査の申請

本学会への倫理審査の申請者は申請時に利益相反申告書を提出するものとする。

6)理事会の役割

理事会は,本学会の活動において深刻な利益相反状態が生じた場合,或いは利益相反の自己申告が不適切と認めた場合,利益相反委員会,編集委員会のそれぞれに調査を指示し,その報告に基づいて改善指導もしくは違反措置を行なうことができる。理事は,本学会の事業活動を実施するなかで企業・団体などと取り交わす契約ならびに合意・申し合わせなどに関して,事業活動に伴う調査活動や発表などにおいて公明性,中立性,適正性において制約を受けたり,規制を設けたりする内容の取り決めを行うべきでない。

Ⅵ. 指針違反者への措置と説明責任

1)指針違反者への措置

本学会理事会は,審議の結果,指針違反者が重大な遵守不履行に該当すると判断した場合には,運用規則に沿って措置をとることができる。

2)不服の申し立て

被措置者は,通知を受けた日から7日以内に,本学会に対し不服申立をすることができる。本学会がこれを受理したとき,理事長は,速やかに外部委員を含めた審査委員会を設置する。審査委員会は,誠実に再審理を行い,理事会の協議を経て,その結果を被措置者に通知する。利益相反委員会委員は,審査委員会委員を兼ねることはできない。

3)説明責任

本学会は,自ら関与する場にて発表された臨床研究に,本指針の遵守に重大な違反があると判断した場合,利益相反委員会および理事会の協議を経て,社会への説明責任を果たす。

Ⅶ. 運用規則の制定

本指針の試行に必要な運用規則は,理事会の議を経て別に定める。

Ⅷ. 指針の改定

本指針は,理事会の承認を得て,変更することができる。

附 則

1)本指針は平成26年6月6日より施行する。

2)本指針は令和31年6月21日に改定する。

運用規則

第1項 目的運用

この運用規則は,日本小児救急医学会が「利益相反に関する指針」の遵守を促すにあたり,本指針の具体的な運用方法と違反者への措置を示すことを目的とする。なお,本指針における開示義務のある利益相反とは,本学会が関わる事業ならびに発表内容に関連する企業や営利団体に関わるものに限定する。

第2項 学術集会などでの発表

1)
本学会が主催する学術集会,セミナー,講演会および市民公開講座などで発表,講演を行う場合,発表者および共同発表者は演題申し込み時に過去3年間の利益相反状態を申告しなくてはならない(様式1)。
2)
発表者,講演者は,講演,セミナー,その他演題発表時に利益相反状態を開示する。

第3項 学会誌などでの発表

  1. 本学会の学会誌や刊行物に掲載される論文の執筆者および共同執筆者は,投稿時に過去3年間の利益相反状態を申告しなくてはならない(様式2)。
  2. 論文掲載時には論文の末尾に利益相反の有無を明記する。

第4項 役員等への就任

日本小児救急医学会の理事長,副理事長,理事,監事,会長,次期会長,各種委員会の委員長,特定委員会(編集委員会、利益相反委員会、ガイドライン作成委員会、医療安全・倫理委員会、薬事委員会、社会保険委員会)の委員は,本学会が関わる事業活動に対して重要な債務を担っており,就任時に過去3年間の利益相反状態を申告しなくてはならない(様式3)。就任後は1年ごとに(様式3)を提出する。また任期中に新たな利益相反状態が生じた場合は,6週間以内に(様式3)によって申告しなくてはならない。

第5項 事務局職員の入職

1.
事務局職員とは常勤,非常勤にかかわらず事務局にて学会事務に携わる者を指す。
2.
事務局職員は入職時に過去3年間の利益相反状態を申告しなければならない(様式3)。入職後は1年ごとに(様式3)を提出する。また任期中に新たな利益相反状態が生じた場合は,6週間以内に(様式3)によって申告しなくてはならない。

第6項 本学会への倫理審査の申請

本学会への倫理審査の申請者は申請時に過去3年間の利益相反申告書を提出するものとする。

第7項 開示すべき事項と基準

対象者は、自身における以下に定める基準を超える場合には、利益相反の状況を所定の様式に従い、自己申告によって正確な状況を開示する義務を負うものとする。また,対象者は、その配偶者、生計を共にする1親等以内の親族、または収入・財産を共有する者も含めて、医学研究に関連する企業や営利を目的とした団体との経済的な関係について、過去3年間におけるCOI状態の有無を開示しなければならない。

1)
企業・組織や団体の役員、顧問職、社員については、同一組織からの報酬額が年間100万円以上の場合とする。
2)
株式の保有については、一つの企業についての年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が100万円以上の場合または当該全株式の5%以上を所有する場合とする。
3)
特許権使用料については、企業・組織や団体からの一つの特許権使用料が年間100万円以上の場合とする。
4)
会議の出席(発表)における研究者を拘束した時間・労力に対して企業・組織や団体から支払われた日当(講演料など)については、同一組織からの年間の講演料が合計50万円以上の場合とする。
5)
企業・組織や団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料については、同一組織からの年間の原稿料が合計50万円以上の場合とする。
6)
企業・組織や団体が提供する治験(臨床試験)費や研究費(産学共同研究費、受託研究費など)については、同一組織から申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間100万円以上の場合とする。
7)
企業・組織や団体が提供する奨学寄附金については、同一組織から申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間100万円以上の場合とする。
8)
企業・組織や団体が提供する寄附金にもとづく寄附講座に所属している場合は、金額にかかわらず対象とする。
9)
研究、教育、診療とは無関係な旅行、贈答品などの提供については、同一組織から受けた総額が年間5万円以上の場合とする。
10)
企業・組織や団体から共同研究などの契約なく役務の提供を受けた場合とする。

第8項 利益相反申告書の取扱い

1)
利益相反申告書は,利益相反委員会が管理,保管する。
2)
理事会は,申告者の利益相反状態について疑義もしくは社会的問題が生じた場合に,学会内外に情報を開示する。
3)
利益相反申告書の保管期間は,学会発表においては発表後2年間,論文においては発行後2年間,役員や委員などにおいては任期終了後2年間,事務局職員においては退職後2年間とし,その後は廃棄される。ただし保管期間中に疑義もしくは社会的問題が生じた場合は,理事会の決定により廃棄を保留できるものとする。

第9項 指針違反者への措置

本学会理事会が,重大な遵守不履行に該当すると判断した場合には,その遵守不履行の程度に応じて一定期間,次の措置を取ることができる。

1)
本学会の集会での発表の取り消し
2)
本学会の刊行物への論文掲載の取り消し
3)
本学会の役員、委員会活動の停止
4)
本学会の会員資格の停止,または除名
5)
本学会事務職員の停職,解雇
6)
本学会への倫理審査の申請却下

附 則

1)本運用規則は平成26年6月6日より施行する。

2)本運用規則は令和元年6月21日に改定する。


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COI該当なし COI該当あり

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