理事長挨拶

理事長あいさつ

2020年 新年の挨拶~年頭所感~
長村敏生

長村敏生新年あけましておめでとうございます。令和の時代になってはじめて迎える年明けとなりますが、会員の皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。自然災害、異常気象がもはや想定外とはいえない地球環境の中で、少子高齢化が急速に進むわが国において、子ども達と保護者に寄り添った支援を使命とする日本小児救急医学会が果たすべき役割はさらに大きくなっていることを痛感しております。

さて、昨年を振り返りますと、日本小児救急医学会では学会主催の教育セミナーとして小児救急教育セミナー(計9回)、小児脳死判定セミナー(計9回)、小児医療従事者向け災害研修セミナー(計16回)をそれぞれ教育研修委員会、脳死問題検討委員会、災害対策委員会が中心になって定期的に開催してきました。これらの教育セミナーは今後も会員の卒後教育の充実、学術団体としての学会のquality向上を目指して継続していく予定です。さらに、小児救急医療の教育・研修目標(2008年)、小児救急のストラテジー(2009年)が発行されて10年以上が経過したので、教育研修委員会、将来検討委員会が合同で小児救急医療の教育・研修目標改定WGを立ち上げ、改定に向けての検討が開始されました。また、発表より7年が経過した小児腸重積症ガイドラインの改定作業もガイドライン委員会により開始されました。

大変有難いことに、会員の先生方からは日本小児救急医学会雑誌に貴重な論文を多数投稿いただいています。2018年10月よりオンライン投稿・査読システムを開始し、掲載に要する手続きの簡素化と迅速化を図ってきましたが、編集委員会では投稿規定を遵守した論文受付業務のスピードアップを図るため、投稿作成マニュアルと論文投稿時に使用するテンプレートを現在作成中です。 さらに、電子化委員会、編集員会、広報委員会が連携して、今年からは会員情報をマイページ上で管理するべく準備中であり、将来的には電子ジャーナル化、年会費のオンライン納入も実現したいと考えています。なお、多忙な業務の中で、投稿論文のqualityを高めるべく熱心かつ献身的に査読に取り組んでいただいている多くの先生方にはこの場を借りて改めて感謝申し上げます。

日本小児救急医学会としては、地域に密着した形で家庭の保護者を支援する活動にも力を入れていきたいと考えています。保護者にとって重要なことは子どもの病気を診断することではなく、子どもの緊急性(今受診すべきかどうか)を判断することです。地域密着型家庭内トリアージ推進WGでは、保護者が家庭内で子どもをトリアージするにあたって重要な指標として、①個々の局所症状よりもまず全身状態をみること、②次にその全身状態が時間経過とともにどのように推移していくかを観察すること、の2点を重視しています。そこで、WG委員の施設における先行研究結果に基づき、「急病時の子どもの見方と受診の目安~問診票を使って、どんな時に受診すればいいか判断しよう~」という小冊子を昨年より作成中です。完成後は学会監修のプロダクトとして広報することを計画しており、保護者がこの小冊子を有効活用して適切な救急受診(①緊急を要する状態を見逃さず、必要時は早めに受診して重症化を予防できる、②緊急を要さない状態では子どもの安静を優先して不要の受診は避け、根拠をもった経過観察ができる)を実践できるようになることを願っています。

調査研究委員会では、わが国における小児救急重篤疾患のデータベース構築を目指して2017年1月1日より小児救急重篤疾患登録調査(Japan Registry System for Children with critical disease:JRSC)を開始しました。小児救急診療の重症患者は頻度がまれで、単独施設における自験症例のデータのみで該当疾患の全体的な臨床的特徴を明らかにすることが困難である問題点への対策の一つとして着手した調査研究です。その結果、丸3年を経過した2019年12月27日現在、55施設から計1,184例の情報が登録されました(死亡症例〔CPAの外来死亡を含む〕280例、新たに人工換気療法を実施した症例984例、化膿性髄膜炎症例37例、新たに虐待が疑われた入院症例91例で、重複あり)。この中で、特に登録症例数が多かった死亡症例、人工換気療法実施症例については、日本小児科学会と合同2次調査を実施予定です。これらの研究結果により本来予防可能であった小児死亡を減らす対策や人工換気療法実施症例の長期予後が改善するような提言を検討することが本委員会の目標です。JRSCは5年間の予定ですが、途中からの参加も大歓迎ですので、できるだけ多くの施設からのご協力をお願いします。

小児救急SI(special interest)メンバー制度が2017年12月10日から開始され、これまでに173名の会員が認定されました。この制度は学会の活動に一定基準以上参加し、小児救急患者に強い興味(special interest)をもって診療にあたり、小児救急医療の学術的発展と普及に貢献している医療従事者を本学会が独自に認定する制度です。小児救急SIメンバー資格を希望される会員は毎年9月1日~10月末日に申請書類を提出することになっており、小児救急SIメンバーには認定書、メンバーカード、ピンバッジが送られます。2019年度の申請受付は終了しましたが、有資格者は今秋に是非申請してください。

おそらくどなたにでも人生の師匠と仰ぐべき指導者は複数おられると思いますし、教育・薫陶を通じた価値観の共有こそがみんなのベクトルを同じ方向に向けて組織を維持、発展させることにつながると考えます。先輩から色々と教えてもらったことを感謝する後輩は自身の後輩にも熱心な指導を行い、その継承により伝統は守られていきます。しかし、不幸にして先輩から色々なことを教えてもらえなかった後輩は自身の後輩の指導にも消極的になり、組織のactivityは結果として衰退していくことになるのではないでしょうか。改革・改善はしっかりした土台があってはじめて成功するといえるのであり、日本小児救急医学会の今後の発展を想うと、「教育」、「育成」、「指導」の気持ちを忘れてはならないと私は考えています。

最後に、「少子高齢化時代の子育て支援を応援する学会」として今後も日本小児救急医学会の活動を多面的に発展させていきたいと考えています。会員の皆様にはさらなるご支援とご協力を重ねてお願いするとともに、皆様にとって良い年となりますことをお祈り申し上げます。